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レビュー第二弾として、HyperX T1シリーズ「KHX2000C9AD3T1K2/4GX」をレビューします。
※文中で「クロック」と言う単語は動作周波数の事を指しています。
外観と仕様
青くて大型な肉厚ヒートスプレッダに覆われているのが目を引きます。
全高は60mm、基板は30mm弱なので、背の低いメモリーのほぼ2倍の背の高さになります。
まず、デフォルト及びXMPプロファイルの設定を、GIGABYTE GA-H55M-USB3にてチェックしていきましょう。
XMPプロファイルは2種類書き込まれています。
左からデフォルト / XMP Profile1 / XMP Profile2
Frequency:1333 / 2000 / 1866
Vdimm:1.5V / 1.65V / 1.65V
QPI/VTT:1.1V / 1.3V / 1.3V
tCL:9 / 9 / 9
tRCD:9 / 11 / 11
tRP:9 / 9 / 9
tRAS:24 / 27 / 27
tRC:33 / 45 / 42
tRRD:4 / 8 / 7
tWTR:5 / 8 / 7
tWR:10 / 19 / 14
tRFC:74 / 110 / 70
tRTP:5 / 8 / 7
tFAW:20 / 30 / 28
tCR:1 / 1 / 1
パっと見て気になる部分が何点かあります。
チップが不明なので特殊な仕様なのかもしれませんが、一般的なチップではtRRD=6ns、tWTR・tRTP=7.5ns、tWR=15nsが規定値になります。しかしProfile2ではtRRDが、Profile1では全てがオーバーしています。
加えてtRRD=8でtFAW=30ではtFAWの計算が合わなくなるような…
そもそも手動じゃtWR=15、tRRD=7が設定上限だったり。
自動設定で読み込めば本当にその通り設定されるのですが、弄ろうとすると元に戻らなくなります。
Profile2のタイミング設定は割と理に適っているのですが、Profile1についてはチグハグな感じがします。
デフォルト設定に関しては、先日レビューしましたHyperX LoVoシリーズ KHX1600C9D3LK2/4GX(以下LoVo)と全く同じです。
XMP設定ではtRCDが11と緩められているのが特徴的。
実際の電圧が自動設定でどうなるか測定すると、Profile1・2共に以下の数値に設定されました。
DRAM電圧:1.671V
VTT電圧:1.368V
DRAM電圧も規定より1クリック分高くされているのが気にならないわけではありませんが、そんなことよりもVTT電圧がかなり高く設定されてしまっています。
ちなみに当マザーで手動設定する際、1.368Vからレッドゾーンになります。
できればVTT電圧は自動設定に頼らない方がいいかもしれません。
【検証1】限界設定テスト
いつも通りmemtest86+でtCL基準の限界設定をチェックしていきます。
CPUはintel Core i7 860、M/Bはmsi P55-GD80。
テスト中の室温は22~26℃、
メモリー表面温度は室温プラス4℃程度。
動作周波数はDDR換算値、
電圧はデジタルマルチメーターによる実測値です。
タイミング表記はtCL-tRCD-tRP-tRAS-tRFCの順。
その他はtCR=1T、tWR=12~15T、tWTR=5~7T、tRRD=4~6T、tRTP=5~7T、tFAW=20~30Tで動作周波数に応じて調整しています。
1.654V
2,334MHz 9-12-10-27-84
2,118MHz 8-11-9-25-78
1,986MHz 7-10-8-23-72
1,785MHz 6-9-7-21-66
1.533V
2,322MHz 10-12-10-29-90
2,142MHz 9-11-9-27-84
1,927MHz 7-10-8-24-75
1,705MHz 6-9-7-22-66
1.371V
1,998MHz 10-11-10-28-86
1,825MHz 9-10-9-26-80
1,645MHz 8-9-8-24-72
1,446MHz 7-8-7-21-64
1.223V
1,386MHz 9-9-9-23-74
まず、面白いのが1.654Vと1.531Vで比べてみると、tRCD、tRPが電圧に反応していない事が判ります。
tCL、tRAS、tRFCは綺麗に1段階程度縮んでいますが、1.531V時はtCL8が有効な設定が実質見当たらず、tCL=7,6時のクロック設定が跳ね上がっています。
この現象は、先にレビューしたLoVoの1.654V設定時にも見られたのですが、それ以外にもLoVoに対してレイテンシ耐性のバランス、いえ、tRCD・tRAS・tRFC耐性は完全に同一と言えます。
LoVoと比較していくと色々と面白いのですが、こちらの製品が上と言えるのはMAXクロック耐性とtCL・tRP耐性、また1.371V時は全体的に更に上積みが見られます。
一方で1.223V時は落ち込みが大きく、五十歩百歩ですが僅かにLoVoに及びません。
また、先のtCL耐性の跳ね上がりの影響で1.654VのtCL=7,6ではほぼ同一の結果になっています。
同じチップを使用している気がしますね。
全体的にLoVoよりは素直ですが、それでも十分クセが強い感触でした。
予定より1日早く検証1を終えられたので、追加検証を行うことにします。
過去のメモリーレビューで既にやっている内容ですが。
【検証2】各設定項目の効果
Sandra2010を用いて、各種設定のメモリー帯域及びレイテンシに対する影響をチェックしていきましょう。
タイミング設定の表記はtCL-tRCD-tRP-tRAS-tRFC-tWR-tWTR-tRCD-tRTP-tFAW-tCRの順。
グラフ1:クロック設定
[0] 下記[5]
[1] 2,334MHz(1.654V 9-12-10-27-84-15-7-6-7-30-1)
[2] メモリー倍率をx12→x10で1,945MHz※
[3] [2]の設定でCPU倍率をx21→x19へ
[4] [2]の設定でQPI倍率をx18→x16へ
※tRTPを7から6へ縮めています。
[1]MAXクロック設定時は帯域・レイテンシ共に最高水準にあり、[2]そのままメモリークロックを12倍から10倍に落とすと当然スコアを落としています。
更に[3]CPUクロックを下げた場合は、帯域はそのままレイテンシのスコアを落としていますが、[4]QPIクロックの変動では差は全く見られませんでした。
グラフ2:タイミング設定
[5] 9-12-10-27-84-12-6-5-6-25-1
[6] 7-12-10-25-84-12-6-5-6-25-1
[7] 7-10-10-23-84-12-6-5-6-25-1
[8] 7-10-8-23-84-12-6-5-6-25-1
[9] 7-10-8-23-74-12-6-5-6-25-1
グラフ1の流れから、今度はタイミング設定を調整して変化を確認します。
まず[5]あまり一般的ではない項目を、[2]でメモリークロックを落としたのに合わせて修正します。
その差はグラフ1で、帯域・レイテンシ共に若干のスコア差が発生している事が確認できます。
その後[6]tCL、[7]tRCD、[8]tRP、[9]tRFCの順に詰めていくと、tCLは帯域・レイテンシ共に大幅なスコアアップが確認でき、tRCDは帯域への影響は小さいですがレイテンシにはtCLと同じ程度の影響が見られます。
tRPは共に小幅なアップ、tRFCは帯域に僅かな影響がある一方でレイテンシは誤差の範囲か影響はなさそうな感じです。
また、最終的にタイミングの限界付近となる[1]と[9]のレイテンシのスコア差がほぼ無くなっていますが、
単純計算で[1]の最小サイクルは約31.71nsで[9]の最小サイクルは約31.88ns、
他の要素もありますが、概ね計算どおりレイテンシは殆ど同じと言えるでしょう。
【検証3】メモリー冷却の必要性
大きなヒートスプレッダに覆われているものの、その必要性はあるのかと疑問に思う人がいるかもしれませんので、テストしてみましょう。
1.654V@tCL=8設定にて、memtestのTest3までを通過させてエラーチェックします。
まず室温29℃でメモリー周辺の空気の流れを極力停滞させ、更に暫く負荷を掛けて温度を上げておきます。
メモリー表面温度40.5℃
エラー数276個。
Test3にて数種類のエラーが一定間隔で発生し続けました。
メモリー冷却を行い、表面温度34.0℃
エラー数3個。一気に減少。
室温も下げて表面温度32.8℃
エラー無し。
以上のことから、限界設定付近ではメモリー温度も重要な要素となる事がわかります。
もしも常用設定目的でギリギリを狙うならば、悪条件下でテストされることをお勧めします。
【備忘録】確認できた新事実
過去のメモリーレビュー内で、VTT電圧によるエラーの変化は無いと言った事を検証したのですが、VTT電圧が効いてくる場面と言うのが今回の検証中に見えてきました。
レイテンシ耐性とは関連が見られず、クロック耐性への影響が大きい様子。
私は基本的に1.2V前後に設定して使用しているのですが、ハイクロック時だけでなく2,000MHzを超えてくる動作時に1.2Vでは安定しない事がしばしば。
memtestではエラーを発生せず、強制再起動や突然停止を伴うような挙動がどうやらVTT不足のサインであるようでした。
クロック限界時のエラー減少効果は見られません。
1.654V@tCL=9設定時の必要VTTは1.287Vでした。
ちなみに、VTTを更に上げていってもクロック限界が上がる事はありませんでした。
この現象はこのメモリーだけでなく、LoVoやCorsairのCMT4GX3M2A1600C6にも見られた気がします。
これらのメモリーのクロック限界の再検証が必要そうです。
話は全く変わりますが、検証2にてtRTPを7から6へ単独で変更しています。
メモリー周波数を下げると同時に6に変更しないと、何故かPOST通過不能になるためです。
7Tの場合は2,334MHzならば約6.0nsですが、1,945MHzでは約7.2ns。しかしtRTPの基準は7.5ns。
うーん…tRASとの兼ね合いも考えましたが、何故周波数を下げると7Tではダメなのか見当もつきません。
まさか7nsでダメなんてことになれば、XMPの設定じゃ動かなくなってしまうし。
気が向いたら、設定の問題かメモリーの問題か、確認してみます。
一発芸
CPU-Zのバリデーション取得を基準にハイクロックに挑戦!
Vdimm=1.7V、VTT=1.3V。
結果:DDR-2,442MHz
この結果をどう見るか。私的にはもう少し伸びると予想していたのですが。
尚、タイミングを更に緩めても全く変わりませんでした。
総評
1.654V時のクロック耐性とtCLの値は完全に基本スペックよりもワンランク上にあり、また1.371Vであっても実用的な設定をいくつか取れるだけの余裕がある点から、幅広い用途に堪え得る能力を備えているメモリーであると言えるでしょう。
欠点としてはtRCD耐性がよろしくないこと、高クロック時にVTTを結構要求してくる事が挙げられますが、割と手が届きやすい価格帯でクロック耐性がそこそこある事に対するトレードオフだと考えれば些細なことだと思います。
XMPの自動設定には疑問を抱かざるを得ませんが。
寧ろ心配なのは、価格帯で競合するLoVoの存在価値が…